題記システムの速度線図について、ご質問があったのでお答えします。
「ステップドピニオン型」というのは、下図のような配置の遊星歯車です。大減速比をねらう場合、シングルピニオン型では、サンギヤを少歯数にする必要があり、限界があります。ステップドピニオンは、サンギヤと大ピニオンのセットと、ピニオン軸が共通の小ピニオンとリングギヤのセットからなる構造を採用したことで、サンギヤの歯数を少なくした場合に相当する減速比を得ています。

1. 基本的な考え方
- 通常の遊星歯車のピニオン:サンギヤとリングギヤ間のアイドラギヤ(変速比に寄与しない)
- ステップドピニオン型:ピニオンが平行軸上にあり、減速ギヤとなる
- 機構を第1段と第2段に分けて考える
- キャリア固定での速度線図を作成し、後でリングギヤ固定に調整する
2. 第1段の速度線図
- 構成:サンギヤ(Zs)と大ピニオン(Zp1)
- 単純な外歯車かみ合い
- サンギヤ回転速度1のとき、大ピニオン回転速度は-Zs/Zp1
- 速度線図:
- サンギヤ:原点右側1/Zs位置、回転速度1
- 大ピニオン:原点左側-1/Zp1位置、回転速度-Zs/Zp1
- 2点を直線で結ぶ
3. 第2段の速度線図
- 構成:小ピニオン(Zp2)とリングギヤ(Zr2)の内歯車かみ合い
- 同一回転方向のため、支点がリングとピニオンの間にない
- 横軸:
- 原点左側-1/Zp2位置にピニオン軸
- 原点左側-1/Zr2位置にリングギヤ軸
- 小ピニオン回転速度:第1段の大ピニオンと同じ
- キャリヤ軸:横軸原点、回転速度0
- キャリヤと小ピニオンを直線で結び、リング軸との交点で回転速度を求める
4. キャリア固定条件での計算式
- サンギヤの回転速度:1
- キャリヤの回転速度:0
- 大ピニオンの回転速度:-Zs/Zp1
- 小ピニオンの回転速度:-Zs/Zp1
- リングギヤの回転速度:-Zs/Zp1 * Zp2/Zr2
5. リングギヤ固定条件への変換
- 全体を +Zs/Zp1 * Zp2/Zr2 で回転させる
- 速度線図:縦軸原点をリングギヤ回転速度位置に移動
- 各要素の新しい回転速度:
-
- サンギヤ:1 + Zs/Zp1 * Zp2/Zr2
- キャリヤ:Zs/Zp1 * Zp2/Zr2
- 大ピニオン:-Zs/Zp1 + Zs/Zp1 * Zp2/Zr2-
- 小ピニオン:-Zs/Zp1 + Zs/Zp1 * Zp2/Zr2
- リングギヤ:0
6. 減速比の計算
- 減速比=サンギヤ速度 / キャリア速度
- ρ = Zs/Zp1 * Zp2/Zr2 とおく
- 減速比 = (1 + ρ) / ρ
- サンギヤ歯数Zs/Zp1 * Zp2、リングギヤ歯数Zr2のシングルピニオン型に相当。大減速比を得られる理由。
7. 具体例(Zs1=32, Zp1=58, Zp2=20, Zr2=92の場合)
- リングギヤ速度:-0.11994
- サンギヤ速度(リングギヤ基準):1 + 0.11994 = 1.11994
- キャリア速度(リングギヤ基準):0.11994
- 減速比:1.11994 / 0.11994 ≈ 9.3375
8.ステップドピニオン型遊星歯車の速度線図作成プログラム
以下のグラフは、各歯数を入力すると、速度線図を作成します。
上述のようなリングギヤ回転速度分を操作する手前の段階、つまりキャリヤ出力ゼロ状態の線図です。これが書ければ、リングギヤ速度を基準にとって、キャリヤ速度とサンギヤ速度を求めます。
Zs1=32,Zp1=58,Zp2=20,Zr2=92のとき、リングギヤ速度は-0.11994です。サンギヤ速度は1なので、リングギヤ基準で見たサンギヤ速度は1+0.11994です。
つぎにリングギヤ基準で見たキャリア速度は、0.11994なので、求める減速比は(1+0.11994)/0.11994=9.3375となります。
また、リングギヤ基準で見るとキャリヤ回転は正回転となるので、サンギヤ回転と同方向の大減速比が得られています。
使い方
歯車諸元入力後、「Calc」ボタンをクリックしてください。「Download」をクリックすると、作成されたグラフがSVG形式でダウンロードできます。
グラフの都合上、画面幅を広くとっているので、スマホ等では見にくいかもしれません。
なお、第2報でグラフを統一したバージョンを紹介しています。
involutegearsoft.hatenablog.com