歯車の形に興味のある人に

ダブルピニオン遊星歯車を作図する(2)

ダブルピニオン遊星歯車の続きです。
第2回目は、歯の位相合わせについてです。

位相合わせの方法

いくつか考え方はありますが、このブログではいつも同じ方法をつかっています。
下図に示すように、角度θで相手歯車にかみ合うときの状況は、A位置で固定歯車とかみ合っている歯車を、B位置まで転動させた場合と同じです。このときの転動歯車の自転量はθ(1+Zs/Zp)です。したがって、B位置で、Aと同じ姿勢を確保し、自転θ(1+Zs/Zp)を与えればB位置でかみ合います。
今回もそれを踏襲していきます。

図1.位相合わせの考え方

第2ピニオンの位相合わせ

図よりZp2はZp1に対して角度121.609°で配置されています。
したがって自転量は(1+Zp1/Zp1)*121.609=243.218左回り回転です。今回はZp2の歯数は奇数だったので、図1に示すような初期位置でのかみ合いが可能です。歯数が偶数の場合は、次のケースがそうですが、1/2ピッチずらす必要があります。

図2.第2ピニオンの位相合わせ

サンギヤの位相合わせ

サンギヤの位相合わせは、3つの要素を加味します。

図2.第2ピニオンとサンギヤ

1番目に、第2ピニオンを基準にしたとき、サンギヤは223.516°で配置されています(図1)。これによる自転量は

rot_1=(1+Zp2/Zs)*223.516=375.187°
です。

2番目に、基準にした第2ピニオンは、自分自身の位相合わせのため243.218°回転しているので、ギヤ比補正して、サンギヤへは逆回転で加えます。

rot_2=-243.218*Zp2/Zs=-243.218*19/28=165.040°

3番目に、サンギヤは偶数なので、第2ピニオンとかみ合うときに半ピッチずらす必要があるので、次を加えます。

rot_3=360/Zs/2=360/28/2=6.428°
合計して、216.575°をサンギヤの回転に設定します。
rot_1+rot_2+rot_3=375.187-165.047+6.428=216.575°

これで1セット分の位相合わせができました。

図3.サンギヤの位相合わせ

残りのセットの位相合わせ

120、240位置のピニオンセット追加

上記の手順で位相合わせの済んだピニオンのセットを、「円形状パターン」で120°、240°位置にも複写します。

図.円形状パターンで複写

追加したピニオンセットとサンギヤ、リングギヤはかみ合わなくなったはずですが、「ダブルピニオン遊星歯車の等配条件」を満足していれば、以降の操作で必ずかみ合います。

120°位置

サンギヤを基準にして、Zp2の位相を合わせます。120°位置なので冒頭の式θ(1+Zs/Zp)---(a)を使いたいところですが注意が必要です。(a)式は、中の[1+]の部分が公転をあらわしています。ところが「円形状パターン」複写すると公転を含んでしまうので、2重に加算することを防止して、次式を使います。

θ*(Zs/Zp2)=120*(28/19)=176.842
Zp1は同歯数なので、逆方向にー176.842となります。

円形状パターンを使わずに直接コピーした場合は、次式を使います。
θ*(1+Zs/Zp2)

240°位置

同様にして
Zp1は

θ*Zs/Zp2=240*(28/19)=353.684
Zp2は-353.684です。
こちらも円形状パターンを使わずに直接コピーした場合は、次式を使います。
θ*(1+Zs/Zp2)

完成品

下図は、Zr73,Zs28,Zp1:19,Zp2:18のダブルピニオン遊星歯車です。左右2つの違いは、第2ピニオンの位置関係が逆になっています。背面から見たのと同じに見えますが、別々に作っています。

図.位相合わせ終了品

Zp2をセンターにした場合

今まではZp1ピニオンをセンターにして作図しましたが、Zp2をセンターにしても同様に作図できます。
作図上の違いは、

  • リングギヤとZp1のかみ合いを維持したまま、Zp2、サンギヤをかみ合うように調整していく
  • サンギヤとZp2のかみ合いは維持したまま、Zp1、リングギヤをかみ合うように調整していく

ことで、とくに作業の難易度が変わることはありませんでした。

図.

計算シート

以上のような計算を毎回行うのは面倒なので、計算シートを作成しました。希望者には差し上げます。

図.ダブルピニオン遊星歯車計算シートA

以上です。これで「ダブルピニオン遊星歯車を作図する」を終わります。