前回作成した不思議遊星歯車の歯数探索&転位設計プログラムを使った結果を紹介します。下図はその一例で左から減速比115、189,351,612のモデルです。入力要素は赤のサンギヤ、固定要素は青のリングギヤ、出力要素は黄色のリングギヤとなっています。
歯数探索の評価
本来なら列挙すべき歯数の組み合わせを、取りこぼしていないかの確認です。前回記載の論文の12例がすべてリストアップできればまずはOKとします。
論文p3 表1の5例
論文表1には以下の減速比1/76~1/612の組み合わせが載っています。
これを開発プログラムで検索すると、それぞれを見つけることができました。
その結果を図3に示します(クリックすると拡大します)。
すべて検出して、転位係数、中心距離、歯溝や歯先歯厚も計算できています。この中では減速比76のケースで、固定リングギヤZ3の歯溝の底厚が負になっています。これは転位が大きすぎて、歯底が尖っている状態なので、このままでは諸元としては不成立です。相手歯車との歯先、歯底径の調整をすれば、成立するかもしれません。
論文p3 表1の5例
論文表1には以下の減速比5.
1/351~1/364の組み合わせが載っています。
この場合は、減速比360±10で検索しました。
その結果15例が検出され、そのうちZ1歯数30までの7例が論文掲載分と一致します。結果の転位係数や歯先歯底の歯厚を見ると、どれも成立しているようです。
結果
Z2歯数が-1のケースの計算では、論文掲載の12例をすべて検索でき、取りこぼしはありませんでした。
転位係数、中心距離計算の評価
3Dモデル化
図3.に記載の結果5件のうち、歯底溝厚が負になった減速比76を除いた4件について、3Dモデルを作成しました。冒頭の図1と同じですが、改めて載せておきます。
指定の転位係数でそれぞれの歯車を書き、指定の中心距離に配置すると、すべてがきれいにかみ合いました。特に気になる、歯数違いのリングギヤかみ合い部も、何ら違和感なく組み立てられています。従って計算は正しく行われていると考えます。
モデルができたので、今回で「不思議遊星歯車」のシリーズは終わります。ありがとうございました。