先日、以下の記事でインボリュート曲線及びトロコイド曲線出力可能なツールを公開しました。
involutegearsoft.hatenablog.com
今回は、AutoCADを用いて、上記ツールで出力したCSV座標データを使ったインボリュート歯車の作成手順を説明します。
データの準備
歯形曲線の計算
以下の諸元の外歯車とします。モジュールは2となっていますが、上記URLの歯形計算ツールはモジュール1固定なので、いったん1で作成後、AutoCAD側で拡大することで対応します。
歯数 | z | 20 |
---|---|---|
モジュール | m | 2 |
圧力角 | α | 20 |
歯末のたけ係数 | ha | 1.0 |
歯元のたけ係数 | hf | 1.25 |
歯先の丸み係数 | ro | 0.38 |
基準円直径 | D | D=-mz=2*20=40 |
基礎円直径 | Db | Db=-mz cos(α)=37.5788 |
歯先円直径 | Da | Da=-m(z+2ha)=44 |
歯底円直径 | Df | Df=-m(z-2hf)=35 |
条件入力後、インボリュート曲線のダウンロード、トロコイド曲線のダウンロードを実行します。
ダウンロード先は、Windowsの「ダウンロード」フォルダになります。
次の2つのCSVファイルがダウンロードできているはずです。
AutoCADでの作図
データの読み込み
ダウンロードしたCSVファイルを、メモ帳などのテキストエディタで開きます。ダブルクリックするとExcelが開いてしまうので、マウス右メニューで「プログラムで開く」や「メモ帳で編集」などを選択してください。
CSVデータをコピー&ペースト
- データをエディタで開くと、1行目が「x,y」で、2行目から実データが並んでいます。今回の「trochoid_curve.csv」では、データ行が21行あります。
- 1行目の「x,y」を「SPL」に書き換えます。これは「SPLINE」コマンドのことです。
- 1行目から21行目までを選択し、コピー(ctrl+c)します。
- AutoCADのコマンド入力欄が待機状態(「ここにコマンドを入力」と表示)のとき、コマンド入力欄をクリックして、ペースト(ctrl+v)します。
- 入力した最後の行が、コマンド入力欄に、未処理で残っているので、エンターをクリックします。
- 入力待ちになるので、もう一度エンターをクリックして、線を確定します。
- マウスホイールをダブルクリックすると、入力した曲線にズームされます。
- 表示されたトロコイドカーブはカクカクとしていて、21点のスプラインとは思えない形です。
- 曲線を選択し、マウス右メニューで「オブジェクトプロパティ管理」をクリックします。
- 「プロパティ」の最下段にある「フィット許容差」を「0」から「0.0001」に変更します。
- 同様に「involute_curve.csv」を処理します。1行目を「SPL」に変更します。
- 全部で32行あるのですが、1行目から27行目をコピーし、コマンド欄にペーストします。
- コマンド欄に、未処理行が残っているので、エンターをクリックします。
- 残り28~32行目をコピーして、コマンド欄にペーストします。
- 未処理行がなければ、エンター1回で確定します。未処理行があればエンター2回です。
- 2回に分けて張り付けたのは、1回の貼り付け行数は最大26行のようだからです。これが正しいのか、どこかに設定があるのかは分かりませんでした。
- インボリュート曲線も同様に「フィット許容差」を「0」から「0.0001」に変更します。これで形状を再現できました。
曲線をつなぐ
インボリュートとトロコイド曲線が作図出来たら、2本を接続します。
- 2つの曲線が近接しているところを拡大表示して、「線分」コマンドで接続します。微小なすきまがあるので「スナップ設定」で「近接」のみをクリックして、その表示が出たポイントで、インボリュートとトロコイドの間に垂線を引きます。拡大すると平行に近いので、近接点は数か所出ると思いますが、複数出たらその中央付近のものを選択します。ずれても1~2μmオーダなので気にしません。
- 試しに2点の近接点を求め、半径に換算すると、9.410366と9.411236となりました。この諸元の「隅肉開始径」理論解は、9.4103ですから、どちらでもよいです。また、2線間の最短距離は0.2~0.3μmなので、接していると判断できます。よって、その点で接続し、不要な線をトリムすれば、片側の歯底から歯先までの曲線が完成します。
歯数15以下になってくると、インボリュート曲線とトロコイド曲線は交わるようになります。その場合は、交点で2曲線を切り替えることになります。
モジュール2対応
上記ツールはモジュール1固定のため、これをモジュール2にします。
- 「尺度変更」クリックします
- 「オブジェクト選択」と出るので、2つの曲線を選択して、エンター
- 「スケール基点を指定」と出るので、「0,0」
- 「尺度を指定」と出るので「2」
逆歯面作成
- 左歯面を選択します
- 「鏡像」をクリックします
- 「オブジェクト選択」で2曲線を選択して、エンター
- 「対象軸の1点目を指定」とでたら、0,0と入力
- 「対象軸の2点目を指定」とでたら、0,10と入力
- 「元のオブジェクトを消去しますか」は「いいえ」
歯先円、歯底円
- 冒頭の表を見て、歯先円、歯底円を作成します。
- 360°で20歯なので、1歯18°です。よってY軸基準で±9の半径線を引きます。
- 不要部分をトリムして、1歯モデルが完成します。
- 「円形状配列複写」で、全歯モデルが完成します。
以上です。