歯車の形に興味のある人に

歯車がかみ合うということ

よく歯車の入門書に次のような記述があります。

  • 2つの歯車がかみ合う条件は、同一モジュール、同一圧力角であること
  • 歯車対がかみ合うためにはモジュールが等しくなければなりません

入門としてはそれでもいいのですが、実際には圧力角とモジュールが異なっていてもかみ合う場合があるのです。その条件とは

  • 2つの歯車の法線ピッチが等しいこと

です。

歯車のピッチ*1は、m:モジュール、α:圧力角として
p=mπ
です。法線ピッチ*2
p_n=p\cosα=mπ\cosα
となります。2つの歯車でp_{n1}p_{n2}が等しければいいので
m_1\cos α_1=m_2\cos α_2
が成立していれば、圧力角とモジュールが違ってもかみ合うのです。両歯面のかみ合いの接触と進行は作用線*3に沿って行われますから、作用線上でピッチが同一であればかみ合うということです。

基準ラック寸法
作用線と法線ピッチ

試してみましょう。
m_1=2、α_1=20°、α_2=25°のとき、
m_2=m_1\cos α_1/\cos α_2=2.0736

Fusion360で3Dモデルを作ってモーションスタディしました。たしかに、歯面の隙間や干渉はなく、きれいにかみ合っているようです。

  • 左側モデル
    • 小歯車:歯数15、圧力角20°、モジュール2、法線ピッチ5.904
    • 大歯車:歯数20、圧力角25°、モジュール2.0736、法線ピッチ5.904
  • 右側モデル
    • 小歯車:歯数15、圧力角25°、モジュール2.0736、法線ピッチ5.904
    • 大歯車:歯数20、圧力角20°、モジュール2、法線ピッチ5.904

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*1:基準ラックで隣接する歯までの距離

*2:ピッチを圧力角に垂直な方向に換算した距離。作用線上での歯のピッチに相当

*3:互いの基礎円をたすき掛けした線