CADで内歯車創成図を書いて3Dモデル化する(3)

前回作成した内歯車の完成品、創成アニメーションを紹介します。また、第1回目で歯形データから歯先丸み中心を求めましたが、計算で求める方法についても紹介します。

前回の完成品

「CADで内歯車創成図を書いて3Dモデル化する(2)」によって作成した歯形形状で得られた3Dモデルが下図です。前々回のような無用な歯筋線もなく、きれいにできています。

図.3Dモデル完成品

創成アニメーション

下図は、ピニオンカッタの自転が進む様子と、内歯車の形状を創成していく様子のgifアニメーションです。右端から次々と登場する歯面は、ピニオンカッタの左歯面を、円とインボリュート曲線で表現したもので、ピニオンカッタ軸周りを反時計回転します。

このアニメはピニオンカッタの自転公転を再現するスクリプトを作成し、実行・記録したものです(ピニオンカッタ歯数30、内歯車歯数125)。

図.創成アニメーション

ピニオンカッタの形状を、中心をずらし、半径を変えて重ね合わせしていくと、内歯車の歯面形状になるところに注目してください。

創成結果

外歯車反転タイプの内歯車モデルと比較しました。
ピニオンカッタは2つに分けてあり、黒色部分はインボリュート部で、回転移動後の包絡線は内歯車のインボリュートと一致します。しかし赤色で描かれた歯先丸み部は、その中心が曲線を描くため、包絡線が外歯車反転タイプの内歯車とは異なった形状になります。

図.創成結果

歯先丸み円の中心座標

「CADで内歯車創成図を書いて3Dモデル化する(1)」では、丸みの中心座標を求めるために、歯末のたけha1.25の歯形データを必要としました。これを計算で求める方法を紹介します。
Z30,ha1.25,m2の歯形に接するφ0.8の円と考えたとき、円の中心は、歯形の内側に0.4オフセットした曲線上にあります。また歯先円から0.4オフセットした円弧の上でもあります。

図.丸み中心の座標

「m2のインボリュート歯形から0.4オフセットした歯形」というのは、法線バックラッシ0.8のインボリュート歯形になります。これは転位係数でいうと、-0.585です。
x=-0.8/2/m\sin (20)=-0.585
結局、求めたいのは、転位係数-0.585のインボリュート線上で、半径が(65‐0.8)/2=32.1である点の座標です。

インボリュート曲線の性質から、ある1点の円弧歯厚と、半径、圧力角が既知なら、インボリュート曲線上の他の半径位置の歯厚が求められます。やってみましょう。

Z30,m2,x-0.585の円弧歯厚sは、
m(π/2-2xtanα)=2.2899
円弧の張る角度❶は
2.2899/(mz/2)=0.07633rad=4.4077deg
歯先円直径は
da=m(z+2.5)-0.8=64.2
基礎円直径は
db=mz*cos(al)=56.38155
よって歯先圧力角αa❷は
arccos(db/da)=0.4986rad=28.567
ピッチ円から歯先までの角度❸
inv(αa)-inv(20)=0.03100rad=1.776deg
歯先角度❹は
0.07633-2*0.031=0.0143rad=0.813deg
歯先円弧歯厚❺
64.2/2*0.0143=0.46
番号❶~❺は下図と対応しています。

図.歯先歯厚を求める

歯先円弧の両端点座標は、❹の歯先角度と歯先円半径を使って次式となります。
x=32.1×\sin(\pm 0.0143/2)=\pm 0.2295\\y=32.1×\cos(0.0143/2)=31.0991

図.歯先丸みの座標計算結果

計算結果の確認

念のため、当方作成で無料提供している歯車設計ソフト「involuteGearDesign」を用い、歯数30、モジュール2、圧力角20°で、転位係数-0.585を作図した結果を、以下に示します。(歯先径調整済み)
「歯先歯厚」の欄を確認すると「0.4601」になっているので、上記❺と一致しました。

図.歯車設計ソフトで確認

なお、前回の記事で「歯末のたけ1.25が出力できるソフト云々」と書きましたが、このソフトでも歯末のたけを調整できます。入力欄をスクロールしていくと「歯先円直径」「歯底円直径」欄が出てくるので、直接外径を入力します。上図で「64.2」「55」を入れているところです。両方を指定してください。

次回に続きます。