歯車の形に興味のある人に

インボリュート曲線計算シートを使って「SpurGear」相当の歯車を作図する

経緯

インボリュート曲線計算式」でExcel版のインボリュート曲線計算シートを作成しました。せっかくなので、これを使って、Fusion360に標準で付属する「SpurGear」スクリプト相当の歯車モデルを作ってみましょう。
(2024.01.13追記)
上記Excelシートの代わりに、2023年12月に投稿した「「歯末のたけ」設定可能なインボリュート曲線計算ツール」を使うことも可能です。

「SpurGear」相当というのは、「正確なインボリュートと歯元隅肉曲線の歯車作図方法」でさんざんやった歯元隅肉計算を行わず、直線や円弧で代用する標準平歯車という意味です。

インボリュート曲線計算シートによる設計

歯数による作り方のちょっとした違い

創成図から歯車の成り立ちを知る(2)」で、歯数41.45を境に歯底円径と基礎円径の大小関係が入れ替わる、という話を書きました。歯元隅肉曲線を厳密計算する歯形では、どちらの場合もインボリュート曲線とトロコイド曲線の接続になるのですが、直線、円弧で代用する方法ではつなぐ相手が違うので考慮が必要です。そこで歯数18と歯数50についてみてみます。

41より小歯数の場合

このケースでは、基礎円より歯底円が小さくなります。インボリュート曲線は基礎円から上しか存在しないので、歯底まで代わりにつなぐ線を作る必要があることを念頭に、次の諸元を入力しましょう。
歯数18
モジュール1
圧力角20

計算結果は入力シートのx,y列に表示されます。また、Fusion360データ出力用のシートも準備してあるので、そこからCSV形式で名前を付けて保存します。

Fusion360用データは、A列にx座標、B列にy座標、C列にz座標が必要ですが、今回はz=0としてシートに入力済みです。
また、Fusion360でデータ読み込み時はcm単位なので、A、B列を1/10倍してあります。

図1.計算結果とCSV保存

2次元モデル作成

データ読み込み

Fusion360ツールバー「ユーティリティ」「アドイン」から「importSplineCSV」を起動します。インボリュート曲線計算結果のCSVファイルを指定します。
❶指定のファイルが読み込まれ、曲線が表示されます(下図左)。
インボリュート曲線の基礎円起点から歯車中心軸と結ぶ半径線を描きます。これがさきほど書いた基礎円から下で歯底円まで結ぶ線になります。

図3.CSV読み込みとモデル化

❸y軸でミラーコピー
❹歯先円で歯先の円弧を作成
❺歯底円を作成
❻図4のようにトリムします。

図4.一歯モデル

3次元モデル作成

「押し出し」で3次元化します。

図5.押し出しで3D化

必要に応じて歯元と歯底円にフィレットを付けます。大きさは0.38mくらいにしておきます。

図6.フィレット追加

歯数分の円形状パターンコピーを行い、その後全要素を結合して1ボディにします。

図7.円形状パターンコピー後、結合

平歯車が完成したので、「SpurGear」スクリプトと比較します。手前がSpurGearによるモデル、奥が今回のモデルで、ほぼ同一です。SpurGearというスクリプトは、歯車技術という意味では非常に簡単なレベルだとわかります。

図8.「SpurGear(手前)」と比較
図9.SpurGearの入力諸元

42より歯数が多い場合

歯数50、モジュール1、圧力角20で見てみます。
下図のように、歯底円径はインボリュート曲線の範囲内なので、別の線を立てる必要はありません。

図10.歯底円はインボリュート範囲

下左図は、フィレットなしの場合で、インボリュートと歯底円を角で接続します。右はフィレットを付けた場合です。

図11.インボリュートと歯底間の接続

厳密計算歯形との比較

41歯以下のように、インボリュート曲線がないところを半径線で代用したのと違って、42歯以上はよく似ています。今回は、わざとラックの歯先丸みと同一のRにしたので、これだけ似るのですが、普通はその目安を知らないので似るかどうかは分かりません。

ただし、似ているとはいってもかたや一様R曲線、かたや徐変Rのトロコイド曲線なので、念のため。

図12.厳密計算歯形との比較