なんとなく、内歯車の歯元隅肉曲線のでき方が分かってきたのですが、これを数式で表すことを考えてみました。
座標変換による方法
CADで内歯車創成図を書いて3Dモデル化する(1)~(3)」では、ピニオンカッタを自転後、内歯車素材の回転を打ち消す方向に公転運動させて、創成運動を求めました。また、ピニオンカッタの歯先丸み中心の軌跡をオフセットすることで、内歯車の歯元隅肉曲線を得られることが分かりました。その過程を順次数式化していきます。
中心軸の異なる回転移動の式
上述の創成運動は、ピニオンカッタ軸周りの回転移動と内歯車素材軸周りの回転移動という、回転中心の違う2つの回転移動を行っていますが、それを数式表現する方法についてです。
まず、点(x,y)の原点周りの回転θ後の座標(X,Y)は、次の変換が知られています。
次に任意の中心軸周りの回転移動は次式です。中心軸を原点に移動後、回転変換して、元の位置に戻すという作業を表しています。
内歯車加工への応用
中心軸の異なる回転移動を2段階で行えば、創成運動後の丸み中心座標が求められるはずです。
ピニオンカッタ中心座標を、内歯車素材中心座標を、ピニオンカッタ歯先丸み中心座標を、ピニオンカッタ歯数Zp、内歯車素材歯数Zrのとき
点をピニオンカッタ軸周りに回転後の座標
点を内歯車軸周りに回転後の座標
行列表現
行列で書けば、,をくくりだして次のようになります。
準備が整ったので、実際にピニオンカッタ歯先丸み中心の軌跡を描いてみます。歯先の丸み中心の初期値は「CADで内歯車創成図を書いて3Dモデル化する(3)」で紹介した計算式を使用しています。
作図例
下図は、左が内歯車歯数Zr50に対してピニオンカッタ歯数Zp30と18、右が内歯車歯数Zr125に対してピニオンカッタ歯数Zp50、30、18で計算した、歯先丸み中心軌跡です。いずれもかみ合いの手前45°~かみ合い後55°までの範囲です。これは丸み中心軌跡ですから、丸み半径分オフセットすると、「内歯車歯形」と書かれた線に接します。
見たところピニオンカッタ歯数が多いほど、軌跡は細長くなり、隅肉曲線としては曲率半径が小さくなっています。
これは何を示しているのか、この曲線はなにか、ということを、次回説明できると思います。