「CADで内歯車創成図を書いて3Dモデル化する(1),(2),(3)」で、内歯車の作図方法を提案してきましたが、検証をしていません。実機確認はちょっと難しいので、「内歯車の創成加工をFusion360でやってみた」の方法で確認しました。
確認モデル
- Fusion360で、ピニオンカッタと素材モデルを作成し、所定の中心距離に配置。カッタを時計回りにΔθ回転させ、同時に素材にもΔθ×Zp/Zrの時計回り回転を与える。カッタが素材と干渉する範囲を除去する動作を、ブーリアン演算のカットで再現。
- 同期回転とカット操作を所定回数実行する作成済みスクリプト利用
ピニオンカッタ諸元
歯数 | Zp | 30 |
歯末のたけ係数 | ha | 1.25 |
歯元のたけ係数 | hf | 1.25 |
歯先の丸み係数 | ρf | 0.2 |
基準円直径 | d | 60 |
内歯車諸元
歯数 | Zr | 125 |
歯先円直径 | da | 246 |
歯底円直径 | df | 255 |
基準円直径 | d | 250 |
素材内径 | 246 | |
素材外径 | 300 |
共通
モジュール | m | 2 |
圧力角 | α | 20° |
中心距離 | a | 95 |
結果
以下に「CADで内歯車創成図を書いて3Dモデル化する(1)~(3)」で予測した歯形形状との比較結果を示しますが、よく一致しています。したがって、(インボリュート部は合うのは当然として)、内歯車の隅肉曲線部は、創成図のカッタ歯先丸みの中心を結んだ線のオフセット曲線であるという予測が正しいと思われます。
(2024.01.16追記)
隅肉部歯形の正確性は、後日、次のことでも裏付けられました。
「歯形係数」を、実測して求めたところ、厳密値との誤差1%以下でしたので、歯元隅肉曲線は正しく計算されていると判断します(別途投稿予定)。
歯形断面形状
下図は「CADで内歯車創成図を書いて3Dモデル化する(1)」で求めた創成図に、今回作成した内歯車の形状を重ねたものです。ぴったりと重なっていることが分かります。
3D形状
下図では「CADで内歯車創成図を書いて3Dモデル化する(2)」で作成したモデル(奥側)に、今回作成した内歯車の3Dモデル(手前側)を並べました。これも一致しています。
歯筋方向に多数の線が入っているのは、2°きざみで計算したことによる多角形誤差のためです。
シミュレーションの様子
下図は内周1周分を加工した様子のgifアニメです。サンプリングを荒くしたので、ピニオンカッタが時計回り回転しているように見えますが、実際は反時計回り方向です。
創成していく様子を下図(gifアニメ)に示します。内歯車素材の内径は、すでに「歯先径」になっているので、ピニオンカッタの歯元隅肉曲線が、内歯車歯先に転写されることはありません。
次は3Dで創成の様子を見たものです(静止画)。ピニオンカッタは軸方向に動かして、内歯が見えるようにしています。
なお、このモデルは、いきなり最終切り込み量を与えていますが、本来のギヤシェーパの動作は、ピニオンカッタが往復動しながら徐々に切り込み量を深くして、荒加工、仕上げ加工、ドゥエル加工を行います。