「インボリュート曲線計算式 - 歯車のハナシ」記事において、インボリュート曲線計算式を2つ紹介しました。
その後投稿した「歯末のたけ」設定可能なインボリュート曲線計算ツール - 歯車のハナシでは、そのどちらでもない3つ目の計算式を使っているので紹介します。
3つ目のインボリュート曲線計算式
インボリュート曲線の特徴として、つぎの性質があります。
「インボリュート曲線上の1点の半径と円弧歯厚、圧力角がわかれば、異なる半径位置の円弧歯厚が求められる」
これを利用して、曲線の基礎円から歯先円までを、微小区間に分割して座標を求めていく方法です。
記号
:インボリュート曲線上の任意の点の半径
:における円弧歯厚
:における圧力角
:のなす角
:モジュール
:歯数
:基準圧力角
:基準円半径
:基礎円半径
:基準円円弧歯厚
:のなす角
円弧歯厚の計算
対象は標準平歯車としたとき、を与えて、任意点()の円弧歯厚を求めるには、下図のようにします。
のとき、基準円半径+1mm位置の円弧歯厚を、実際に求めてみましょう。
基本諸元の計算
φの計算
の計算
図1より、円弧歯厚Sの張る角度は、Siの張る角度です。
基準円半径RからRiまでの角度はなので、次式が成り立ちます。
よって半径31での円弧歯厚は2.40881であることがわかりました。
ここで
座標計算
円弧歯厚とその角度が計算できましたが、インボリュート曲線にあるのは円弧の端点なので、直交座標系に変換します。
検算1
「歯末のたけ」設定可能なインボリュート曲線計算ツール - 歯車のハナシにおいて、歯数30、モジュール2、圧力角20と入力します。
歯末のたけ係数は、R=31なので0.5を入力します。
計算実行して、CSVの最終行を見ると次のようになっていて、同じ結果を得ています。
[1.20410607,30.97660615,0]
検算2
実際にCADで確認してみましょう。
図3は、Fusion360にアドイン「igears」で作図した上記諸元の歯形のR31位置円弧とその端点を、「計測」機能で測定した結果です。igearsでは今まで紹介した3種類とは異なる計算式を用いているのですが、まったく同一の円弧長、および座標値となっていることから、今回の計算式は正しいと判断します。なお、図中の「2.4083」は弦長であって、弧長ではありません。
python例
上記の計算過程をpythonでべた書きした例です。評価点半径のところから以降を、Riが基礎円から歯先円までの反復処理に代えたもののjavascript版が「歯末のたけ」設定可能なインボリュート曲線計算ツール - 歯車のハナシで使われています。
import math def inv(v): return math.tan(v)-v m=2 # モジュール z=30 # 歯数 al=20 # 圧力角 al=math.radians(al) R=m*z/2 # 基準円半径 Ri=R+1 # 評価点半径⇒ここから以降をRb<=Ri<=Ra(歯先円半径)間で繰り返す Rb=R*math.cos(al) # 基礎円半径 phi=math.acos(Rb/Ri) # Riの圧力角 S=m*math.pi/2 # 基準円半径 th=S/R # Sのなす角度 thi=th-2*(inv(phi)-inv(al))# Siのなす角度 Si=Ri*thi # 円弧半径 yi=Ri*math.cos(thi/2) # 半径Ri位置のx座標 xi=Ri*math.sin(thi/2) # 半径Ri位置のy座標 print(xi,yi)