QCAD(,LibreCAD)で転位歯車の創成図を描く

標準歯車の創成図につづいて、転位歯車の創成図を描いてみます。使用するCADは「QCAD無料版」がメインですが、「LibreCAD」の場合も代替手段を書いておきます。
下図は転位係数が左から1,0.5,0,-0.5,-1.0での創成図を示したものです。

図1.転位歯車の創成図



手順

モデル

歯車仕様を、歯数z20、モジュールm1、圧力角α20°とし、転位係数xを-0.5、0.0、0.5の3種類を作成します。
手順は無料のLibreCAD,QCADで外歯車のホブ創成図を描く - 歯車のハナシを踏襲します。

図2.モデル

転位係数0歯車の創成図

新しいレイヤーを作ります
以下のボックス内のラック作成コマンドリスト13行をコピーして、QCADのコマンド入力にまとめて張り付けます。
ha=1
hf=1.25
pa=20
m=1
x=0.0
polyline
-PI/2*m,-hf*m+x*m
-PI/4*m-hf*tan(pa)*m,-hf*m+x*m
-PI/4*m+tan(pa)*m,ha*m+x*m
0,ha*m+x*m
PI/4*m-tan(pa)*m,ha*m+x*m
PI/4*m+hf*tan(pa)*m,-hf*m+x*m
PI/2*m,-hf*m+x*m

ここで
ha:歯末のたけ係数
hf:歯元のたけ係数
pa:圧力角(deg)
m:モジュール
x:転位係数
コマンドというか、簡単なプログラムになっているので、ha,hf,m,pa,xを任意の値に書き換えて実行できます。

図3.コマンド入力
LibreCADの場合は、以下のリストをコマンド入力欄に貼り付けてenter押します。
pl;-pi/2, -1.25;-pi/4-1.25*tan(pi/9), -1.25;-pi/4+tan(pi/9), 1;0, 1;pi/4-tan(pi/9), 1;pi/4+1.25*tan(pi/9), -1.25;pi/2, -1.25;
ラックが作図されたら、左右の歯元に0.38m(mはモジュール)のフィレットを付けます
新しいレイヤーを作ります
ラックを選択します
次のコマンドを5行まとめてコピーしてコマンド欄に張り付けます。

3行目のrotate2コマンドは「2つで回転」のことで、次行の「0,-m*z/2」はワークの回転中心O1の座標です。「0,1000000」はカッタの回転中心O2の座標です。本来はホブなので直線運動するところを、大きな回転半径にすることで直線に近似しています。

m=1
z=20
rotate2
0,-m*z/2
0,1000000
回転2オプションダイアログが表示されます。

「多重コピー」にチェックして30入力、アングルaに1、アングルbに10/1000000をいれてOKクリックします。bに入れる数値は、O1とO2の半径比つまりm*z/2/1000000です。アングルaが1deg回転するとアングルbは10/1000000deg回転するという関係を、1degずつ増やしながら30回繰り返すので、aは1~30まで1deg毎に創成図を描きます。歯数が少なくなると30degでは不足するので、適宜増やします。

図4.回転2オプション
LibreCADの場合は、該当コマンドがないのでメニューから実行します。

「メニュー」「ツール」「変更・修正」「二点で回転」

できた創成図は左半分なのでミラーコピーして完成です。

転位係数-0.5、+0.5歯車の創成図

ラック作成コマンドの5行目「x=0.0」を「x=0.5」または「x=-0.5」に変更して、コマンド欄に貼り付けます。

ラックのy座標値に+x*m(mはモジュール)を加えるので、ラックがy軸方向にシフトします。

ラックが作図されたら、左右の歯元に0.38mのフィレットを付けます
または、移動コマンドで、転位0のラックをy軸方向に+0.5mまたは-0.5mの位置にコピーします。
LibreCADの場合は、転位ゼロのラックをy軸方向に+0.5mまたは-0.5mの位置に移動コピーします。

後の手順は同一です。回転2オプションも変更しません。

作図結果

転位係数-0.5,0,+0.5の創成図を下図に示します。

図5.転位係数-0.5,0,+0.5の創成図

以上です