このアドインも、人気があって使用記事が多いです。インストールすると多くのメニューが登録されますが、その中には歯車理論の裏付けがないと思われる独自の歯形があり、注意が必要です。
メニュー
下図が初期メニューですが、平行軸歯車以外のラック、ベベルギヤ、ウォームギヤは今回は対象外です。
特徴
前述のメニューのうち平行軸歯車分を取り出したのが下表です。
(1) | spur gear | 平歯車 |
(2) | simple/double helical gear | ハスバ、ヤマバ歯車 |
(3) | internal spur gear | 内歯車 |
(4) | non standard internal spur gear | 非標準内歯車 |
(5) | simple/double internal helical gear | ハスバ、ヤマバ内歯車 |
(6) | simple/double non standard internal helical gear | 非標準ハスバ、ヤマバ内歯車 |
(7) | profile shifted spur gear | 転位平歯車 |
(8) | profile shifted helical gear | 転位ハスバ歯車 |
調査の結果、すべてのアドインにバックラッシの設定がありませんでした。また、(3)には頂隙がありません。さらに、(4)と(6)は、内歯の歯形を正しくない方法で反転させている「正しくない内歯車」と同様の操作を行っていることがわかりました。
一方、(7)と(8)は以前のバージョンでは転位の定義を誤っており、ラックをシフトすべきところを実際の歯形をシフトしていました。しかし、現在のバージョン1.1.1ではこの問題が修正されており、正しい処理をしているようです。
以上の点についてこれから説明する内容に注意しながらのご利用をお勧めします。
外歯の歯元形状
「SpurGear」アドインは、小歯数の時インボリュート曲線の基礎円起点と中心を結ぶ半径線と歯底円との間にフィレットを付けるデザインです。しかし、「GF Gear」では歯底円との接続部にフィレットがなくピン角が形成されています。大歯数ではインボリュート曲線と歯底円がピン角で接続されます。ピン角は応力が集中しやすく、そのため軽負荷で使用するか、手作業でフィレットを追加することを検討した方が良いでしょう。これによって、歯車の耐久性や信頼性が向上し、適切な状況での使用が可能になります。
内歯車の頂隙(クリアランス)
下図は歯数が34の内歯車と外歯車を表していますが、歯先と歯元にクリアランス(頂隙)がありません。この図では、外歯車の輪郭を単純に内歯車の内側に配置しているため、相手歯車との干渉の可能性があります。
非標準内歯車
下図は、(3)と(4)を比較したものです。(4)は作者独自のアプローチであり、歯車理論には基づいていないようです。説明資料には、「歯の形状を反転させたことで、トリミング干渉を減少させました」と記載されていますが、これによってインボリュート歯車の特性は失われてしまいます。この変更により、歯車の動作や性能に影響がある可能性があります。
転位歯車
このアドインの以前のバージョンでは、転位方式に関して誤った理解がありましたが、最新バージョンでは修正されています。下図に示すように、旧バージョンでは転位0のインボリュート曲線をシフトしていましたが、新バージョンでは正しい方法でラックをシフトしている形状に修正されています(歯数20)。
ハスバ歯車は軸直角
ハスバ歯車の設計には軸直角と歯直角方式がありますが、歯直角方式が多いようです。今回取り上げたアドインでハスバに対応している他のアドインは歯直角方式ですが、GF gearのみ軸直角方式です。筆者作成の「igears2」も歯直角方式です。
下図はZ20ねじれ角20°を軸直角で設計したモデルと、Z20平歯車モデル、そしてGF gearでZ20ねじれ角20で設計したモデルを並べたものです。GF gearsの断面形状が平歯車と同じであることから、軸直角方式と分かります。歯直角になれた設計者が多いと思いますので、注意が必要です。