歯車の形に興味のある人に

ラビニヨ(Ravigneaux)方式遊星歯車列

自動車の自動変速機によく使われるラビニヨ遊星歯車列を紹介します。

ラビニヨ方式とは

ラビニヨ方式はダブルピニオンプラネタリとシングルピニオンプラネタリの複合で、リングギヤ、キャリヤ、ロングピニオンを共用しています。4速自動変速機用歯車列の一つですが、6速や8速自動変速機の構成部品としてもよく使用されます。初期の2速自動変速機でも使われました。Ravigneauxはフランス人発明者名です。
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1st~4th,rev構成

上記のアニメは、4速自動変速機の2ndまたは4th段の運転状態です。フロントサンギヤ入力時は2nd(減速)で、キャリヤ入力時は4th(増速)となります。
1stとrevはキャリヤ固定で1stはダブルピニオン部使用するので正転減速、revはシングルピニオン部を使用するので逆転減速、3rdは全体が一体回転するので直結です。全段リングギヤ出力になっています。詳しくは、後述する「ラビニヨ方式遊星歯車の変速比の算出法」へのリンク先をご覧ください。

なお、3,4速自動変速機を構成する遊星歯車列としては、ラビニヨ以外にCR-CR方式、シンプソン方式があります。

その後の多段化

自動変速機は長らく4速が主流でしたが、2000年ごろにZF社から6速自動変速機が出たのをきっかけに急激に多段化しました。その6速で使われた遊星歯車列は「ルペルティエ方式」といって、ラビニヨの前段にシングルピニオンプラネタリを追加しただけで、クラッチブレーキの数は増えていないという画期的なものでした。ルペルティエもフランス人発明家です。トヨタ(アイシン)のFR8速は、ラビニヨの前段に、シングルではなくダブルピニオンプラネタリを組み合わせて8速を実現しました。
トヨタ(アイシン)のFR10速は、カット写真とMotorFan記事見る限り、ラビニヨと2列のシングルピニオンプラネタリの構成のようです。

ZFはルペルティエ式6速以後、FR8速やFF9速を開発していますが、ラビニヨ構造は入っていません。効率面で、ラビニヨのダブルピニオンはかみ合いが多くなって不利になるという比較をしたZF広報資料を見たことがありますから、それが理由の一つかもしれません。

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「ダブルピニオン遊星歯車を作図する(1)」
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